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浦沢直樹「星新一と私」
「もしもし、ホシと申しますが、お母様いらっしゃいますか?」
「あ、いえ...今、母は出かけています」
「そうですか。では電話があったこと、お伝え下さい」
「はい。あ、失礼ですが、もう一度お名前を...」
「ホシです。ホシシンイチです」
(クククッ...すごい同姓同名だ)

少しして母が帰宅。

「さっき電話があったよ。ホシって人から」
「ああ、同窓会の件だわ」
「それがさ、ホシシンイチだってさ。あの星新一と同姓同名だよ」
「ああ、そういえば○○さんの住所、問い合わせたの、有名な小説家さんとか言ってたわ」
「......!?」
(本物だった!?)


30年以上前の話である。

そう、どうやら私はあの星新一さんとじかにお話したことがあるらしいのだ。らしいというのは何故かというと、今になって母にその時の事を聞くと、

「えーと確か、私が同窓会の幹事をしていて、奥さまか、妹さんか...住所を調べていて、それでえーと...」
「じゃあ、なんでご主人かお兄さんの星新一さんがウチに電話してくるのさ」
「そう言えばそうね...ウーン...」

いつも肝心なこととなると記憶が曖昧な母であった。


しかし、この話、実に星新一さんのあの感じがする話だとおもいませんか。突然電話がかかってきて、では失礼しましたときってしまった男性。その名もホシシンイチ。

夢のようでいて現実的。クールなようで人間的。つかみどころのないクスクス笑いのようなあの感じ。


私は16才の時、大好きな星新一さんの小説「来訪者」を漫画化しました。(現在それは「PLUTO」第4巻豪華版付録として読んでいただくことができます。)そんな私ですから、星新一さんと電話でお話ししたなんて、もし事実だとしたら狂喜乱舞するところです。でもこのボワーンとした夢のような不思議な感じ...。


だけど、いまも私の耳にはっきりと残っているのです。


「もしもし、ホシと申しますが...」

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林敏夫「星新一氏とエヌ氏の会」(2008.10)
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