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 寄せ書き 
御影たゆた「星コーチ」
CGアニメーター
 私と星新一作品との最初の出会いは、中学の国語の教科書に載っていた『繁栄の花』でした。輪読が終わったときに、今までの授業では経験したことのない不思議な敗北感で教室が満たされたことを今でも覚えています。
 直球しか知らない少年野球チームが全く見たことのない変化球を投げられて手も足も出なかった感じでしょうか。これじゃ負けてもしょうがないな、世の中には多分もっといろいろな変化球を投げるやつがいるんだろうなという大きな期待も同時にありました。まあ、その期待は次の国語のイニングにすぐに裏切られたわけですが。

  横山光輝の漫画『三国志』、ガンズ&ローゼスやニルヴァーナやイングヴェイ・マルムスティーンのCD、漫画雑誌の『アフタヌーン』『ビッグコミックスピリッツ』などなど、高校では退屈な授業になるといろいろな現実逃避グッズが回ってきましたが、小説では星さんの本が唯一のレギュラーでした。
 短くて漫画的に読めるから人気があったというわけではなかったようで、短編の名手と呼ばれる作家も何度か暇つぶし球団に加わえられては「カムストック」(使えない外国人ピッチャー)呼ばわりされてしょんぼり図書室へ帰国していきました。
 一応進学校だったのでみんなまじめに授業を受けていたはずだったのですが、代数幾何や行列や古典などの非現実的な強さの敵の前に結局『三国志』と星さんの本が全部教室に揃う羽目になってしまったのは今では苦くも楽しい思い出です。

 その後わたしはCGで短編アニメーションを作る仕事をするようになり、必要に迫られて「脚本の書き方教室」的な本や参考になりそうな小説、主に短編小説をいろいろ雇ってくるのですが、それらは大抵「カムストック」で紙資源ゴミの日に帰国していってしまいます。
 偉そうな脚本家先生の采配も性に合わずバッティングフォームに不安を感じていたところに、ふらりと現れたのが私の球団を引退したはずの星さんの本でした。
 学生時代に読んだものとは挿絵が変わってるし、確かこれはベスト版的な位置づけだったはずだからおトクだな、というどうでもいい理由でたまたま『ボッコちゃん』を買ってきたのですが、この往年の名選手の指導がすばらしく良いのです。
 脚本家カントクの言ってることも正しいのかもしれないけど、一番私になじむのはこのコーチだなあ、と自前で星さんの本を再び集め始めた矢先「星新一のショー トショートを映像化する仕事、大急ぎだけど、いけますか?」というメールが来たときにはさすがに驚きました。このコーチは人脈の方も伊達じゃないなと。

 NHK で放送された『星新一 ショートショート』はそれぞれの制作者、特にアニメーションの方は失うものが何もない無名の新人が多かったので、打席に立ったら怖いもの知らずにやりたい事をやりたい放題やっていました。時々豪快に空振ったりもしてましたが、のびのびプレイできたおかげで本来の力以上の成果を出せた人が多かったように思えます。ここまで無茶をしてもファンから物を投げつけられもせず試合が成立したのは星さんの作品の足腰の強さ、基礎体力のおかげでしょう。

 甲子園で優勝したのかはナゾのまま、『星新一 ショートショート』の中の9作品「のびのびナイン」は海外に渡り、「第37回国際エミー賞」コメディー部門の最優秀賞を勝ち取ってしまいました。
 少年誌の野球漫画でもここまで都合の良い展開はないですよね、星コーチ。


2011年1月

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